奥の細道
大和思想的な行動
オイラの職場の奥には、細い道がある。
道の片側は山になっていて、草や木が、たくさん生えている。
反対側は低い崖で、下に畑がある。
道が細くなっている区間は、800メートルくらいで、車がそこを通るときは、一方の車が、少しだけ広くなっている「すれ違える場所」で待機し、対向車が、そこまで来るのを待ち、対向車が通り過ぎてから進まなければならない。
「すれ違える場所」は、その区間に数カ所しかない。
だが、直線の区間が600メートルくらいあるので、遠くまで見て、対向車が来るかどうかを確認して走れば、特に問題は起こらない。
基本的に、その道を通る人は、その道に慣れているので、今まで、すれ違うことができなくて困ったことはない。
そこを通る人は、みんな、その「すれ違い方」を心得ていて、オイラが「すれ違える場所」で待っていると、相手は、素早くそこまでやって来るし、オイラが道幅が狭い区間を走っていると、100メートル以上先にある「すれ違える場所」で、待っていてくれる。
面白いと思うのは、ほとんどの人が、すれ違うときに、毎回片手を上げて、
「ありがとう」
「どういたしまして」
というような挨拶をしたり、クラクションを鳴らして、
「プップッ(悪いねっ)」
「プップッ(別にいーよ)」
というようなコミュニケーションをとっていることだ。
一般の道路を走っていると、周りの車は全て他人に思えるが、その細い道を走っていると、妙な「温かさ」を感じてしまう。
そこは、すれ違うたびに「温かさ」を感じる「奥の細道」なのだ。
先日、その「奥の細道」で面白いことがあった。
オイラは、小型のトラックを運転していたのだが、見通しの悪い区間を走っていると、前から乗用車がやって来た。
そばに「すれ違える場所」がなかったので、オイラはトラックを山の方にいっぱいに寄せなければならなかったし、相手は、崖の方にいっぱいに寄せなければならなかった。
幸い、道幅が狭いといっても、最徐行すれば、すれ違えるくらいの道幅だったので、ゆっくりと、ゆっくりと車を動かして、徐々にすれ違っていった。
と、そのとき、
「ガッ!!」という音が相手の車から聞こえた。
オイラが運転しているトラックと相手の車には、それなりに間隔が開いていたので、オイラは、「相手の車が、ガードレールにぶつかったのかな?」と思った。
「まっ、オイラのせいじゃないな」と思って、オイラは、ゆっくり車を進めた。
でも、一応気が引けるので、サイドミラーで相手の様子を見ながら、ゆっくりと進んでいった。
すると、
運転手が、車から降りて、こちらに走って来るではないか。
オイラは、トラックを止めた。
窓を開けて外を見た。
すると、そこには、二十歳くらいのキレイな女の人が立っていた。
「助けてください。タイヤが落ちちゃったんです~」
困った目でこっちを見ているではないか。
「しょ~がね~な~」と思いながら、オイラは車から降りた。
相手の車を見ると、左の前輪が、道路の脇の低くなっている場所に落ちていた。
「タイヤが脇に落ちて、車が動かないんです~。車動かせますか~?」
そのキレイな女の人は、オイラに、その車を運転して、そこから出してほしいと言っているようだ。
「しょ~がね~な~」と思いながら、オイラは、その人の車に乗り、アクセルを踏んだ。
だが、その人の言う通り、タイヤがはまって全く動かない。
「ん~~。牽引するロープもないし、どうしたものかな~」
そう思っているうちに、前からも後からも車が2~3台きてしまった。
その細い道は、完全に「通行止め」になってしまったのだ。
「ん~~。とりあえず車を押して、車を出せるかどうか試してみるか~」
オイラが乗っていたトラックには、オイラの他に4人乗っていたので、ダメもとで、みんなで車を押してみることにした。
オイラたちが、車を押す。
女の人が、車に乗ってアクセルを踏む。
「ぬぬ~~~…」
「ぬぬぬぬ~~~…」
「ぬぬぬぬぬ~~~…」
ブゥ~ン
「ぅお~~~!!」
みんなで力を合わせて、なんとか車を出すことができた。
「ふ~~、なんとか車を出せて良かった」
みんなの顔には、安堵と喜びの表情が浮かんでいた。
周りを見ると、後から来た車の運転手も、心配して、こっちに来ていた。
「ありがとうございます~。助かりました~」
相手の運転手も、安心した様子だ。
車を出せて良かったけど、「通行止め」になっているから、うかうかしていられない。
オイラたちは急いで車に戻って、車を動かした。
前からは、3台の車が来ていたが、その車の運転手達は、その細い道に慣れていたので、いつも通り、難なくすれ違うことができた。
いつも通り、片手を上げて、
「ありがとう」
「どういたしまして」
クラクションを鳴らして、
「プップッ(悪いねっ)」
「プップッ(別にいーよ)」
といった具合だ。
オイラの職場の奥には、細い道がある。
そこでは、今日も、温かい「すれ違い」が行なわれているのだ。
ここで一句。
すれ違う
たびにほっこり
奥の細道
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道の片側は山になっていて、草や木が、たくさん生えている。
反対側は低い崖で、下に畑がある。
道が細くなっている区間は、800メートルくらいで、車がそこを通るときは、一方の車が、少しだけ広くなっている「すれ違える場所」で待機し、対向車が、そこまで来るのを待ち、対向車が通り過ぎてから進まなければならない。
「すれ違える場所」は、その区間に数カ所しかない。
だが、直線の区間が600メートルくらいあるので、遠くまで見て、対向車が来るかどうかを確認して走れば、特に問題は起こらない。
基本的に、その道を通る人は、その道に慣れているので、今まで、すれ違うことができなくて困ったことはない。
そこを通る人は、みんな、その「すれ違い方」を心得ていて、オイラが「すれ違える場所」で待っていると、相手は、素早くそこまでやって来るし、オイラが道幅が狭い区間を走っていると、100メートル以上先にある「すれ違える場所」で、待っていてくれる。
面白いと思うのは、ほとんどの人が、すれ違うときに、毎回片手を上げて、
「ありがとう」
「どういたしまして」
というような挨拶をしたり、クラクションを鳴らして、
「プップッ(悪いねっ)」
「プップッ(別にいーよ)」
というようなコミュニケーションをとっていることだ。
一般の道路を走っていると、周りの車は全て他人に思えるが、その細い道を走っていると、妙な「温かさ」を感じてしまう。
そこは、すれ違うたびに「温かさ」を感じる「奥の細道」なのだ。
先日、その「奥の細道」で面白いことがあった。
オイラは、小型のトラックを運転していたのだが、見通しの悪い区間を走っていると、前から乗用車がやって来た。
そばに「すれ違える場所」がなかったので、オイラはトラックを山の方にいっぱいに寄せなければならなかったし、相手は、崖の方にいっぱいに寄せなければならなかった。
幸い、道幅が狭いといっても、最徐行すれば、すれ違えるくらいの道幅だったので、ゆっくりと、ゆっくりと車を動かして、徐々にすれ違っていった。
と、そのとき、
「ガッ!!」という音が相手の車から聞こえた。
オイラが運転しているトラックと相手の車には、それなりに間隔が開いていたので、オイラは、「相手の車が、ガードレールにぶつかったのかな?」と思った。
「まっ、オイラのせいじゃないな」と思って、オイラは、ゆっくり車を進めた。
でも、一応気が引けるので、サイドミラーで相手の様子を見ながら、ゆっくりと進んでいった。
すると、
運転手が、車から降りて、こちらに走って来るではないか。
オイラは、トラックを止めた。
窓を開けて外を見た。
すると、そこには、二十歳くらいのキレイな女の人が立っていた。
「助けてください。タイヤが落ちちゃったんです~」
困った目でこっちを見ているではないか。
「しょ~がね~な~」と思いながら、オイラは車から降りた。
相手の車を見ると、左の前輪が、道路の脇の低くなっている場所に落ちていた。
「タイヤが脇に落ちて、車が動かないんです~。車動かせますか~?」
そのキレイな女の人は、オイラに、その車を運転して、そこから出してほしいと言っているようだ。
「しょ~がね~な~」と思いながら、オイラは、その人の車に乗り、アクセルを踏んだ。
だが、その人の言う通り、タイヤがはまって全く動かない。
「ん~~。牽引するロープもないし、どうしたものかな~」
そう思っているうちに、前からも後からも車が2~3台きてしまった。
その細い道は、完全に「通行止め」になってしまったのだ。
「ん~~。とりあえず車を押して、車を出せるかどうか試してみるか~」
オイラが乗っていたトラックには、オイラの他に4人乗っていたので、ダメもとで、みんなで車を押してみることにした。
オイラたちが、車を押す。
女の人が、車に乗ってアクセルを踏む。
「ぬぬ~~~…」
「ぬぬぬぬ~~~…」
「ぬぬぬぬぬ~~~…」
ブゥ~ン
「ぅお~~~!!」
みんなで力を合わせて、なんとか車を出すことができた。
「ふ~~、なんとか車を出せて良かった」
みんなの顔には、安堵と喜びの表情が浮かんでいた。
周りを見ると、後から来た車の運転手も、心配して、こっちに来ていた。
「ありがとうございます~。助かりました~」
相手の運転手も、安心した様子だ。
車を出せて良かったけど、「通行止め」になっているから、うかうかしていられない。
オイラたちは急いで車に戻って、車を動かした。
前からは、3台の車が来ていたが、その車の運転手達は、その細い道に慣れていたので、いつも通り、難なくすれ違うことができた。
いつも通り、片手を上げて、
「ありがとう」
「どういたしまして」
クラクションを鳴らして、
「プップッ(悪いねっ)」
「プップッ(別にいーよ)」
といった具合だ。
オイラの職場の奥には、細い道がある。
そこでは、今日も、温かい「すれ違い」が行なわれているのだ。
ここで一句。
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たびにほっこり
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